プロジェクト実施地域
ビハール州ガヤ市スジャータ村
活動の背景・課題
ニランジャナスクール設立から5年ほど経過した2004年、親のいない子どもたち、物乞いをして暮らす子どもたちが、安全な場所で生活できるようにと開設。
両親、もしくは片親がいない。親が障害をもっていたり、病気で働けない。両親が生存していても、兄弟が多くて育てられない。親戚に預けられているが、世話をしてもらえない。
様々な理由から、日常生活を送ることがままならない子どもたちを預かり、ニランジャナスクール卒業まで、生活と学びの機会を保障しています。
2009年に、現地パートナー団体「トラスト」が行った独自の調査によると、
周辺の村々には、未だ60名以上の孤児が存在することがわかっています。
また、現在孤児院では、男児のみに限って受け入れています。
今後、女児を受け入れていくためには、女児用の住居施設のほか、治安面の危険、そして今もなお残る慣習「ダウリー(結婚の際に新郎の親に支払う多額の持参金)」の問題を解決する必要があります。
活動内容
孤児院では、9~18歳までの男児25名が共同生活を送っています。
孤児院受け入れの審査基準は、親戚ともども貧しく、子どもを養う能力が保護者にないこと、親戚が近くに住んでいること、いざというときの保護者への連絡がすぐにできるような体制になっていることなどです。
孤児の中には、保護者や親戚に連れられて孤児院にやって来たときに泣いてしまう子もいますが、通常2~3日ですっかり生活が楽しくなり、数ヶ月もすれば、村に帰ることも忘れてしまうほどで、孤児院が子どもにとっての「ホーム」になります。
同じ境遇の仲間と共同生活を送ることで、心強い仲間の絆ができ、現地パートナー団体のトラストや、セワサンガのスタッフとも家族のような関係を築いています。
孤児院では、5時に起床し、ベッドの上で勉強、身支度を整えて朝食をとり、学校へ。
学校から帰宅したら、自分の制服などの洗濯をすませ、グラウンドに遊びに行ったり、塾へ行ったり、思い思いに過ごします。
夕方には、瞑想と伝統音楽を全員で楽しみ、宿題をして、夕食、就寝、というのが1日の流れです。
孤児院の子どもたちは、どの子もとてもよく勉強しています。
ニランジャナスクールに自分の家から通う子どもたちは、小さい頃から家事や農業などの手伝いをするのが普通なのですが、
孤児院の子どもたちは、好きなだけ勉強できる環境が整っているため、ほとんどの子どもがクラスで優秀な成績を修めています。
また、上の子が下の子の面倒をみたり、宿題をみてあげるのが当たり前の習慣となっているため、とても面倒見がよく、自分のことだけでなくまわりのことにも気を配れる子どもに成長していきます。
孤児院と聞くと寂しいイメージがありますが、ここの孤児院の子どもたちは、誰よりも笑顔で楽しく生活しています。
子どもたちは、ニランジャナスクールの卒業とともに、孤児院も卒業します。
今後の課題
子どもたちの多くが、できるだけ長く孤児院で生活しながら勉強を続けたいと望んでいますが、未だ路上で生活する子どもたちにも入所の機会を提供するため、18歳で孤児院を出て生活していかなければなりません。
しかし、孤児院を卒業後、自分で生活費を稼ぎながら勉強を続けるのは困難なため、トラストでは大学を卒業するまで学費・生活費の支援を続けています。
また、地域には、孤児院に入ることができない子どもがまだまだ存在します。
頻繁に、孤児院入所を望む子どもが親に連れられてやってくるのですが、今は現状を維持するのがやっとの状態で、新しい孤児を受け入れる余裕がないことも、私たちが胸を痛める悩みのひとつです。
子どもたちを困難から守るためには、トラストだけでなく、子どもの親戚や保護者の協力が欠かせません。
孤児院の次のステップとして、「在宅孤児(親戚の家や片親のもとに身を寄せている孤児)」をいかに支援するかが、今後の課題となっています。
より多くの孤児たちを貧困から救うためには孤児を支援するサポーターの存在が大変重要です。